今日もどこかで空想中。小説と戯れ言の居場所。


by plasebo55
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TRPGやってきたよね/クトゥルフ神話TRPG

 クトゥルフ神話TRPGやってきました、の第2弾。
 シナリオは「朝告げ鳥に餌を与えよ」

 黒猫と白ワインが思ったよりも早く終わってしまい、KPさんの計らいで別シナリオやりましょうということに。準備中のシナリオを急遽繰り上げて仕上げてくださいました! 感謝。

 またまたこの先は後日談です。
 ネタバレがあるような、ないような。
 前回よりは、あります。たぶん。




 キャラクターは東海林めぐみ。前回西だから今度は東だろうと、安直に。
 タケノコ販売業を営む、農林業従事者。
 結果は、生還。前回はSAN値が、今回はHPがピンチでした。






 TRPGのシナリオは先が知れてしまうと楽しくないですから、
 これから遊ぼうと思った方は、お気をつけて! では!



 





 
 ***
 
 たけのこくらいたいせつな


 
 
「かんせーい」

 私は高らかに宣言した。

「ふっふっふ。さんざん手こずらされたけど、これであなたはもう、シンバルを鳴らすことはできない!

 見なさい、その手に持たせたタケノコの美しさ!
 フェルトとは思えない完成度!
 めぐみ最高傑作、旬のタケノコ二刀流!」

 びし、と相手を指さす。

「…………」

 返事は無いけどまあいいか。感動で二の句が告げない、そう言うことにしてあげよう。

 なんて。
 私が今指さしていたのは、猿のぬいぐるみだ。手にシンバルを持っていて、おもちゃのくせに結構音がする。時計がついているのだけれど、じゃあ目覚ましかというと、そうでもない。

 この猿のぬいぐるみは、異世界の住人。
 思い出したように、不気味な声でしゃべりだす。

 頭がおかしいと思うでしょう。
 でもね、これは本当の話。乾電池もスピーカーもないのにしゃべるんだ。そのうちシンバルも鳴らしだすんじゃないかってはらはらしていたのだけど、動き出す前にタケノコに取り替えてしまえば良いって思いついたの。我ながら良い考え。ナイスタケノコ。

 そのうちシンバルがなるんじゃないかってはらはらするのには、もう一つ、理由がある。
 それは忘れようとしても忘れられない、不思議な体験のせい。

 ある時目が覚めたら、そこはいつもとは違う世界。なんていうのは、ネットを検索すればごろごろと出てくる話。嘘だと思いつつも、私は、自分にもそんなことが起こらないだろうか、なんて、少し、思っていた。

「それがまさか、本当に体験するなんてねー……」

 もう、笑うしかない。

 あの日私は新しい取引先を探すべく隣の県へ出向いた。寝られればいいやと選んだ宿は、値段の割には上品で温泉も小さいけど眺めも最高で、上機嫌でベッドに入ったんだ。

 夜。けたたましいシンバルの音にたたき起こされた。
 気づけばそこは、客室ではない薄暗い部屋で。
 この猿のぬいぐるみが、気色の悪い声で、言ったのだ。「朝告げ鳥がどこかへ行ってしまった」と。

「だれも信じたりしないわよ」

 猿のぬいぐるみをつつく。
 返事はない。

「まあ、いいんだけど。言う気もないし」

 あの時は、仲間がいたから。
 だから誰に言えなくても、我慢できる。

 正直、怖い体験だった。床に転がる惨い姿の死体や、槍を携え迫る醜い女は、今でも時々夢に見て飛び起きてしまう。
 私はあの時死にかけた。背後から忍び寄る怪異に襲われて、黒くぬめる槍に刺されて。
 醜くゆがんだ顔、吐き気を催す腐臭、心臓を握りつぶすような恐怖、それからあっという間に動きを奪っていく痛み、どれも決して忘れることはできないんだろう。

 ふと、ぬくもりを感じた気がして、知らず握りしめていた自分の左手を目の前にかざしてみた。
 もちろん、ホラーでも何でもない。絆創膏をまいた手が見えるだけ。

「……大きな手だったなあ」

 手を、握る。今度は、やさしく。
 思い出したぬくもりは、いつも会うたび頼りないなと思っていたお医者さま、伏見さんのもの。あの経験を共にした一人。

 大怪我で動けなくなった私の傷を治してくれて、手を引いてくれた。本当は負ぶってくれるっていったんだけどね。ほら、服が汚れちゃうと迷惑かけちゃうし。……。だ、断じて体重気にした訳じゃないんだから。

「ちゃんと働く男の人の手だったなあ。ちょっと──」

『大変だ! 大変だ!』
「ひゃっ!?」

 突然喚きだした猿のぬいぐるみの頭を叩く。

「怖い! もっとその声かわいくならないの?
 ……あ、注文きてる。伏見さん、また? タケノコそんなに好きだったっけ」

 あれから、頻繁に伏見さんからタケノコの注文が入る。タケノコに魔よけの効果は無かったと思うけどな。

「あ、そうだ、安城さんにもタケノコ送ってあげよう」

 そうしてもうひとり、あの怪異で知り合った人を思い出す。

 オカルト作家の安生悠香。私の愛読書、「オカルトの持ち味」の著者。
 イメージよりもだいぶ活発な人だった。持ち前の知識であの不思議な出来事にどんどん情報をくれて、醜い生き物を退治して私を助けてくれたのも、安生さんだ。

「ソフトボールの選手とか、ユニフォームも似合うかもね」

 昔はやっていた、と。桃を投げた姿は、歓声を上げるほどかっこいい。「めぐみちゃんになにすんのよ」と名前まで呼ばれたら、しびれるしかない。今は作家業が忙しいからソフトボールする暇はないだろう。安生さんのかっこいい姿は、私だけの宝物だ。

 そうだ。安生さんにタケノコを送ったら。
 あのときのことを書き残しておこうと思う。たかだか一時間の冒険だったけれど。書きたいことがたくさんある。彼女みたいにおもしろくはかけないだろうけれどそれでもいい。

 怖かったけれど、それだけじゃなかったのだ。
 忘れたりしないだろうけれど、形にして残しておきたい。

 書き出しは何にしよう。どこから書こう。
 けれど終わりは決まっている。

「何も違和感は感じない、けたたましい鳥の声が追ってくることも、背後から足音が忍び寄ってくることも、なにもない。
 私たちは部屋に踏み行った。明るい、まぶしい部屋へ」

 
 
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by plasebo55 | 2014-12-31 16:36 | リプレイ!