調子に乗って本日2回目。
2005年 08月 07日
心は、静かだった。
動作も、思考とのずれがない。落ち着いて、受け流す、斬る、突く。
周囲ではなにやら細いうめき声とか、ものを引きずるような音とか、無駄な雄叫びとか、金属のうち合わさる甲高い音とか、怒声とか、なにかとうるさい。
僕はそれがとても気に障っていて、静かにさせようと刀を振るっていることに気が付いた。
なにをしてるんだろう。
ふと気が付いて手を止める。切っ先は倒れた男の鼻先でぴたりととまり、男は引きつるような短い悲鳴を上げた。
刀をそのままに、周りを見回す。10人には満たない人数の追いはぎが思い思いに地面に転がっている。もう二度と立ち上がらなさそうな姿の者もいた。すべて、僕がやったことだ。街道をわずかに外れたこの場所に座り込んでいた僕を、襲ってきたのは追いはぎと思われる男たちの方だ。
僕は自己防衛しただけだ。けれどそれを主張するべき相手はこの場にはいない。だから、この惨事は僕のせい。僕は悪くない、なんて言わない。この場だけは、僕が強くて追いはぎたちが弱かった、それだけだ。
つよい、とはなんだろう。
ふわりと柔らかい風が通り過ぎる。頭が熱い。昨日の夜から考え続けているが、答えはいっこうに見つからない。まぶたがはれぼったくて開けているのがしんどい。目が乾いて瞬きを繰り返す。
考えることは得意じゃないんだ、僕は。でも今は「つよい」ということがどういうことなのか、知りたい、とても。
足下からうめき声。視線をそらした隙に動こうとした男を、僕の足が無意識に踏みつけていた。いや、無意識にということは無いと思う、わずかに視界の隅に、その動きをとらえたに違いない。足をどける。
「ねえ、つよいって知ってる?」
思いつきで、聞いてみる。刀を突きつけられた男は、ぽかんとしたような、ひきつったような表情のまま、一度口を開いたが何も言わないで閉じた。
あたりまえか。僕が一晩寝ないで考えたことを、目の前の僕より弱い男が知っているわけがない。落胆したりはしない、うすうす、わかっていたから。
「じゃあさ、つよい人、って知ってる?」
そう、昨日の、あの男のような。
男は痛みに顔をゆがめながら震える手で僕を指した。今日初めての、嘆息。朝から嘆息するなんて、酷い日だ。
「そういうおべんちゃらしか知らないなら用はないんだけど」
また悲鳴が上がる。嘆息で肩を落としたせいか、剣先が男の鼻先触れたみたいだ。別に脅したつもりはないんだけど、男は勢いよく話し始める。
僕はその言葉をぼんやりと聞いていた。体を動かしていないと、立ったままでも眠ってしまいそうだ。眠ってしまったら僕より弱いこの男に斬られるのだろうか。そうなれば、男は僕よりつよいということになるのだろうか。
よくわからない。
大きな剣を背負った、大男だ、と追いはぎの男が言った。ぱちりと、まさに今覚醒したように、意識がさえる。昨日のあの男に違いない。
考えてみれば、僕の旅する理由は師の敵を捜すだけではなくて、僕より強い人間を捜すことだ。この広い大陸に、目標が一人しかいないのでは、いつ目的を達成できるかわからない。できれば目標はたくさんいて、巡り会う可能性は高い方がいいに決まっている。だから昨日の大男に出会ったことは、本当は喜ぶべき事のはず。
だけど、負けることがこんなに悔しいなんて。
まったく歯が立たないという負け方は、僕が師から独り立ちを許可されてから初めての事だ。この悔しさも、ひさしく味わっていなかった。これが悔しいという感情の、見本のような、負け方。
「45点ってなんだよ」
あの男の言いぐさが、あの男の振るまいが、すべてすべて俺の方が強いのだと言っているようだった。斬りかかっても、振り返りさえしない、眼中にない、おまえなど相手にする価値もない、そういう振る舞いだ。
ぎりぎりと歯ぎしりする。次にあったら刀の鞘を顔面に投げつけて、戦って勝って、45点の理由を聞いてやるのだ。
殺さないでくれ、と足下の男が悲鳴を上げていた。おいはぎなんかしなければいいのに。殺されたくなければ戦わなければいいんだ。僕は血払いすると刀を鞘に収めた。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
■気の済むまでいいわけ
本当に調子にのってすみません。だってすげえ面白かったんだもん。からさらに続きます「僕」です。
で、戦ってないし(汗)
本当は俺の方を書こうかとも思ったんですが、挫折。
あんまり続きっぽくすると、書きたいときに書けないから一話独立にしたほうがいいかなとも思ったんですが、自由にしてよし、ということだったんで、続き書いちゃいましたよ。
あ、危ないコになっちゃったな、僕。
すみません、こんなんでunnyo8739さまに続きます。
というか、こんなにハイペースなの、今日が日曜日だからですよね、ね?(汗)
動作も、思考とのずれがない。落ち着いて、受け流す、斬る、突く。
周囲ではなにやら細いうめき声とか、ものを引きずるような音とか、無駄な雄叫びとか、金属のうち合わさる甲高い音とか、怒声とか、なにかとうるさい。
僕はそれがとても気に障っていて、静かにさせようと刀を振るっていることに気が付いた。
なにをしてるんだろう。
ふと気が付いて手を止める。切っ先は倒れた男の鼻先でぴたりととまり、男は引きつるような短い悲鳴を上げた。
刀をそのままに、周りを見回す。10人には満たない人数の追いはぎが思い思いに地面に転がっている。もう二度と立ち上がらなさそうな姿の者もいた。すべて、僕がやったことだ。街道をわずかに外れたこの場所に座り込んでいた僕を、襲ってきたのは追いはぎと思われる男たちの方だ。
僕は自己防衛しただけだ。けれどそれを主張するべき相手はこの場にはいない。だから、この惨事は僕のせい。僕は悪くない、なんて言わない。この場だけは、僕が強くて追いはぎたちが弱かった、それだけだ。
つよい、とはなんだろう。
ふわりと柔らかい風が通り過ぎる。頭が熱い。昨日の夜から考え続けているが、答えはいっこうに見つからない。まぶたがはれぼったくて開けているのがしんどい。目が乾いて瞬きを繰り返す。
考えることは得意じゃないんだ、僕は。でも今は「つよい」ということがどういうことなのか、知りたい、とても。
足下からうめき声。視線をそらした隙に動こうとした男を、僕の足が無意識に踏みつけていた。いや、無意識にということは無いと思う、わずかに視界の隅に、その動きをとらえたに違いない。足をどける。
「ねえ、つよいって知ってる?」
思いつきで、聞いてみる。刀を突きつけられた男は、ぽかんとしたような、ひきつったような表情のまま、一度口を開いたが何も言わないで閉じた。
あたりまえか。僕が一晩寝ないで考えたことを、目の前の僕より弱い男が知っているわけがない。落胆したりはしない、うすうす、わかっていたから。
「じゃあさ、つよい人、って知ってる?」
そう、昨日の、あの男のような。
男は痛みに顔をゆがめながら震える手で僕を指した。今日初めての、嘆息。朝から嘆息するなんて、酷い日だ。
「そういうおべんちゃらしか知らないなら用はないんだけど」
また悲鳴が上がる。嘆息で肩を落としたせいか、剣先が男の鼻先触れたみたいだ。別に脅したつもりはないんだけど、男は勢いよく話し始める。
僕はその言葉をぼんやりと聞いていた。体を動かしていないと、立ったままでも眠ってしまいそうだ。眠ってしまったら僕より弱いこの男に斬られるのだろうか。そうなれば、男は僕よりつよいということになるのだろうか。
よくわからない。
大きな剣を背負った、大男だ、と追いはぎの男が言った。ぱちりと、まさに今覚醒したように、意識がさえる。昨日のあの男に違いない。
考えてみれば、僕の旅する理由は師の敵を捜すだけではなくて、僕より強い人間を捜すことだ。この広い大陸に、目標が一人しかいないのでは、いつ目的を達成できるかわからない。できれば目標はたくさんいて、巡り会う可能性は高い方がいいに決まっている。だから昨日の大男に出会ったことは、本当は喜ぶべき事のはず。
だけど、負けることがこんなに悔しいなんて。
まったく歯が立たないという負け方は、僕が師から独り立ちを許可されてから初めての事だ。この悔しさも、ひさしく味わっていなかった。これが悔しいという感情の、見本のような、負け方。
「45点ってなんだよ」
あの男の言いぐさが、あの男の振るまいが、すべてすべて俺の方が強いのだと言っているようだった。斬りかかっても、振り返りさえしない、眼中にない、おまえなど相手にする価値もない、そういう振る舞いだ。
ぎりぎりと歯ぎしりする。次にあったら刀の鞘を顔面に投げつけて、戦って勝って、45点の理由を聞いてやるのだ。
殺さないでくれ、と足下の男が悲鳴を上げていた。おいはぎなんかしなければいいのに。殺されたくなければ戦わなければいいんだ。僕は血払いすると刀を鞘に収めた。
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■気の済むまでいいわけ
本当に調子にのってすみません。だってすげえ面白かったんだもん。からさらに続きます「僕」です。
で、戦ってないし(汗)
本当は俺の方を書こうかとも思ったんですが、挫折。
あんまり続きっぽくすると、書きたいときに書けないから一話独立にしたほうがいいかなとも思ったんですが、自由にしてよし、ということだったんで、続き書いちゃいましたよ。
あ、危ないコになっちゃったな、僕。
すみません、こんなんでunnyo8739さまに続きます。
というか、こんなにハイペースなの、今日が日曜日だからですよね、ね?(汗)
by plasebo55
| 2005-08-07 18:03
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