雨音とともに。
2007年 04月 13日
暇つぶしのウナギ御飯さま再会。
ああ、なんて声を出すんだ──
「なあに? 契約主が現れたら教えろって言ったの、君のほうよ。まあ、ちょっと順序が逆になっちゃったけど」
そう、そのとおり。
おまえ自身が言ったことだ。
確かに自分から探し出したようなものだけど。
それでも契約違反というほどではないだろう?
なのに、なんて顔をしている。
なのに、なんて声を出す。
おまえはまるで置き去りにされた子供のような。
おまえはまるで恋人の裏切りにあったような。
「ああ、これでお役ご免ね。清々した。あなたの依頼は二度と受けないわ」
「噂に名高い紬のヴェルガが、そんな柔なこと言うとは思わなかったぜ」
あの女は『俺の敵』だ。
愛しくて、愛しくて、今すぐにでもこの手にかけたい。
またあの一瞬を、高揚を、歓喜を、充足を。
契約など無ければ今すぐにでも手に入れられるのに。
まさか、理由など問うまいな?
「冗談。あの契約金でも安いくらいよ。あんたも気をつけなさい」
「忠告ありがとよ」
まさか、想像しなかったなんて言わないだろう。
「さあ、やろうか。剣を抜けよ」
さあ、やろうじゃないか。刀を抜け。
二人が居るところに鉢合わせしたのは、なかば偶然だった。男が現れるとすれば契約期間ぎりぎりにだろうと、ヴェルガは思っていた。だから驚いた。けれど予想していなかった訳じゃない。すぐに表情を隠せる程度には、予想していた。
シャオエンがなにかに誘われるように、雨の中を歩く。それを後ろからそっとつけた。
雨具を探すひまもなかったので、ヴェルガもずぶぬれだ。何もなければ、風邪を引いたときには君のせいだ、そう言ってやるつもりだった。それを心のどこかで願っていた。
なんて顔で私を見るの。
よろけるように振り返ったシャオエンの、雨音にさえ負けそうな細い声に、心が小さくささくれ立つ。わずかな、それは罪悪感なのだろうか。賞金稼ぎの自分が賞金首に? まさか。
「ああ、これでお役ご免ね。清々した。あなたの依頼は二度と受けないわ」
情が移った、のかもしれない。
大男に向かって言う。清々したのは紛れもない、心からの言葉だ。
ああ、なんて声を出すんだ──
「なあに? 契約主が現れたら教えろって言ったの、君のほうよ。まあ、ちょっと順序が逆になっちゃったけど」
そう、そのとおり。
おまえ自身が言ったことだ。
確かに自分から探し出したようなものだけど。
それでも契約違反というほどではないだろう?
なのに、なんて顔をしている。
なのに、なんて声を出す。
おまえはまるで置き去りにされた子供のような。
おまえはまるで恋人の裏切りにあったような。
「ああ、これでお役ご免ね。清々した。あなたの依頼は二度と受けないわ」
「噂に名高い紬のヴェルガが、そんな柔なこと言うとは思わなかったぜ」
あの女は『俺の敵』だ。
愛しくて、愛しくて、今すぐにでもこの手にかけたい。
またあの一瞬を、高揚を、歓喜を、充足を。
契約など無ければ今すぐにでも手に入れられるのに。
まさか、理由など問うまいな?
「冗談。あの契約金でも安いくらいよ。あんたも気をつけなさい」
「忠告ありがとよ」
まさか、想像しなかったなんて言わないだろう。
「さあ、やろうか。剣を抜けよ」
さあ、やろうじゃないか。刀を抜け。
二人が居るところに鉢合わせしたのは、なかば偶然だった。男が現れるとすれば契約期間ぎりぎりにだろうと、ヴェルガは思っていた。だから驚いた。けれど予想していなかった訳じゃない。すぐに表情を隠せる程度には、予想していた。
シャオエンがなにかに誘われるように、雨の中を歩く。それを後ろからそっとつけた。
雨具を探すひまもなかったので、ヴェルガもずぶぬれだ。何もなければ、風邪を引いたときには君のせいだ、そう言ってやるつもりだった。それを心のどこかで願っていた。
なんて顔で私を見るの。
よろけるように振り返ったシャオエンの、雨音にさえ負けそうな細い声に、心が小さくささくれ立つ。わずかな、それは罪悪感なのだろうか。賞金稼ぎの自分が賞金首に? まさか。
「ああ、これでお役ご免ね。清々した。あなたの依頼は二度と受けないわ」
情が移った、のかもしれない。
大男に向かって言う。清々したのは紛れもない、心からの言葉だ。
by plasebo55
| 2007-04-13 22:36
| リクエスト小説