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今日もどこかで空想中。小説と戯れ言の居場所。


by plasebo55
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雨音とともに。

暇つぶしのウナギ御飯さま再会。


 ああ、なんて声を出すんだ──

「なあに? 契約主が現れたら教えろって言ったの、君のほうよ。まあ、ちょっと順序が逆になっちゃったけど」

 そう、そのとおり。
 おまえ自身が言ったことだ。
 確かに自分から探し出したようなものだけど。
 それでも契約違反というほどではないだろう?

 なのに、なんて顔をしている。
 なのに、なんて声を出す。

 おまえはまるで置き去りにされた子供のような。
 おまえはまるで恋人の裏切りにあったような。

「ああ、これでお役ご免ね。清々した。あなたの依頼は二度と受けないわ」
「噂に名高い紬のヴェルガが、そんな柔なこと言うとは思わなかったぜ」

 あの女は『俺の敵』だ。
 愛しくて、愛しくて、今すぐにでもこの手にかけたい。
 またあの一瞬を、高揚を、歓喜を、充足を。
 契約など無ければ今すぐにでも手に入れられるのに。

 まさか、理由など問うまいな?

「冗談。あの契約金でも安いくらいよ。あんたも気をつけなさい」
「忠告ありがとよ」

 まさか、想像しなかったなんて言わないだろう。

「さあ、やろうか。剣を抜けよ」

 さあ、やろうじゃないか。刀を抜け。






 二人が居るところに鉢合わせしたのは、なかば偶然だった。男が現れるとすれば契約期間ぎりぎりにだろうと、ヴェルガは思っていた。だから驚いた。けれど予想していなかった訳じゃない。すぐに表情を隠せる程度には、予想していた。

 シャオエンがなにかに誘われるように、雨の中を歩く。それを後ろからそっとつけた。
 雨具を探すひまもなかったので、ヴェルガもずぶぬれだ。何もなければ、風邪を引いたときには君のせいだ、そう言ってやるつもりだった。それを心のどこかで願っていた。

 なんて顔で私を見るの。

 よろけるように振り返ったシャオエンの、雨音にさえ負けそうな細い声に、心が小さくささくれ立つ。わずかな、それは罪悪感なのだろうか。賞金稼ぎの自分が賞金首に? まさか。

「ああ、これでお役ご免ね。清々した。あなたの依頼は二度と受けないわ」

 情が移った、のかもしれない。

 大男に向かって言う。清々したのは紛れもない、心からの言葉だ。
by plasebo55 | 2007-04-13 22:36 | リクエスト小説