今日もどこかで空想中。小説と戯れ言の居場所。


by plasebo55
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30

カテゴリ:お題( 10 )

SSったー

「川」「クリスマス」「ヨーグルト」に関わる、「ハッピーエンド」のSSを8ツイート以内で書きなさい。 shindanmaker.com/15896

*
 船が沈まないぎりぎりの大きさのソーラーパネルがおんぼろラジオの生命線だ。ラジオを動かせば並列に繋がれた浄水装置は間欠的に働くのをやめてしまう。
 だが、今日はいいだろう。ラジオ以外に娯楽もない、出来る遊びなどたかがしれている。


*
 子供がラジオのチューナーを弄る。
 電波の波をラジオが拾っていく。

 ――じんぐる、べる。じんぐる、べる。

「誰だね、こんな曲リクエストしたのは」

 季節は通年太陽のちスコール。
 ラジオ以外に季節を知る由もない。


*
「おとちゃん」
「うん?」

 ラジオから顔を上げた子供の顔は日焼けと潮焼けで真っ黒だ。女がこぞって美白美白と言った時代もあったようだが、今じゃ滅多にお目にかかれない。

 まあ女にも滅多にお目にかかれないが。
 船に乗る女など数知れている。


*
「おとちゃん! くりすますってなに」
「……あー うん?」

「くりすます。ラジオで言ってた」
「あー」

 ぼりぼりと頭を掻く。白い物が落ちた。塩だ。


*
「良い子にしてたらじいさんがいいものくれる日だ」
「いいもの」
「いいもの」
「ほんとのおとちゃんとかか」
「そうだな……あ、いやそりゃむりだ」
「むりか」
「無理だ」
「じゃあヨーグルトは」
「次に陸が見えて牛が居たらな」
「おう」


*
「……おとうちゃん泣かんか?」

 裸足へ舳先へと駆けていく子供の背に声をかける。
 振り返った子供は首を傾げる。

「なんで?」
「おとうちゃん、ヨーグルトと一緒……いやなんでもない」

 ヨーグルトも滅多に出会えるものじゃない。


*
「りくか。どこかな」
「旧アーグノ川を上がってるはずだから運が良ければ」
「きのうまでカンピかいにいたよな?」
「東に進んだろ?」
「おう」
「じゃあハナン大陸に突っ込んで、アーグノ川上がってるはずだ」
「みわけつかん」
「そうだな」


*
「おとちゃんおしっこ」
「おーおー その辺でしてしまえ」

 子供が言うと、男は広大な海を指す。

「お互い男で良かったな!」
[PR]
by plasebo55 | 2014-05-29 01:11 | お題

エール③

 女性は髪をかき上げた。

「それが君の選択」

 テーブルの向かい側、長い髪が女性の指の動きにあわせて揺れるのを、僕は吸い込まれるように見ていて、ふと、気づいた。普段は涼やかで知的な輝きを宿す彼女の瞳は、今は感情を落として暗く沈んでいることに。暗いまなざしが僕をじっと見つめている。

「正直、失望した感がないわけでもない」

 その言葉に、かあっと頭に血が上るのがわかる。冷静でなければならないと、出がけに先生に散々言われていなかったら、この場でわめきだしていただろう。

「僕だって、この答えが正しいなんて思ってる訳じゃないです」

 わめく代わりに握りしめる拳が震える。
 自分が完璧だなんて、そんなこと、思ったことはない。
 自分が正しいなんて、言える自信なんてない。

「僕が正しいなんて、言うつもりもない」

「完璧な人間はいない、か」

 女性はそこで初めて嘆息した。瞬きをした彼女の目元は光を取り戻していたが、僕を見てはいなかった。掌を僕に向けて、伸ばした手を見ている。マニキュアの塗り具合を確認するような、仕草。

「それは、怠慢への言い訳じゃないと言い切れるかい」

 ぎくりとした。

「自分が正しくないから正しくない答えが許される? 完璧でないから完璧でない選択肢が許される? それを安易に選んではいないかい?」

 見ていた爪で、グラスをはじいた。ちん、と高い音。

「錬金術は、最善の選択では駄目だ。魔術助手も、そうだろう? 正しくない物を基底に据えれば、積み上げる物は全て歪んでしまう。それを使えば、結果はわかるだろう?」

 不純物の多い魔力の結晶は、魔術が正しく発動しないばかりか、行使する魔術師に牙を剥くことがある。

「だけど、完全な魔力の結晶なんて」
「そう、存在しない。けれど、絶対にありえないことだろうか。君は考えたことがある?」

 女性はそういって、言葉に詰まった僕を見ると、少し笑った。

「少し休憩しようか。甘い物が考え事には必要だよ」

 いつもの、毒々しい赤紫色のお茶が入ったコップが、僕の前に置かれた。
[PR]
by plasebo55 | 2009-11-09 20:37 | お題

中の戯れ言

 うふふ、ごくろうさま。
 一年がんばった成果がでて、よかった。

 正確には、一年以上、もうずいぶん長いこと、がんばってた。

 さあ、君の人生に幸あれ。
[PR]
by plasebo55 | 2008-03-10 21:46 | お題
07.

「それ何個目?」
 歩矛はスプーンをくわえたまま顔を上げた。
「食べる?」
「いや、いらないけど」
 テーブルの上にはアイスの空、カラ、から。


                      ──ペット


 歩矛はアイスがお気に入りだし、彼は歩矛がお気に入りだ。

 たぶん、その関係は、相手の自立を認めたりはしていないのだろうと思う。



 追記

 自立、と、独立で非常に迷った。
 自立しているけれども独立していない、とか、独立しているけれども自立していない、とかはあり得るのだろうか。……うーん、うん、あるか。
 
 相手の独立を認めない、と、相手の自立を認めない……だと、やっぱり自立を認めない、の方がしっくりくる、かなあ。行為としては独立を認めない、のだけれど、心内は自立を認めない、なのですよ。うん。
[PR]
by plasebo55 | 2007-06-09 23:44 | お題
 06. 

「不思議じゃない?」
 キョウは微笑んだ。病院の、ベッドの上。

「みんなが同じ方向を向いてがんばっているのに、次々と途中下車していくの」


                                              ──電車


 電車とは、敷かれたレールの上を走るもの。
 それは時にはおきまりのコース、物足りないと思うだろう。
 大勢と同じコースに、息の詰まる思いだろう。

 けれど、その電車に乗れない人間も、いる。


 がんばれば報われるなどというのは、決まったことじゃない。
 自分で決めれば後悔しないなどということはない。

 がむしゃらであれば生きているなどと思わないことだ。
[PR]
by plasebo55 | 2007-05-25 12:35 | お題
 05. 

 何を言っても生返事なのよ。
「そういうとこ、お父さんそっくりね」
 言うと、姉はけらけらと笑った。
「その言い方、お母さんそっくりだわ」

                        ──学ぶ



 この感情でさえ、学んだものなのだと。

 悲しいと思うこと。
 嬉しいと思うこと。
 怒りを感じること。
 愛しいと感じること。

 それらすべて、学んだものなのだと。

 思うと、不思議な感じがする。

 きっとこの恐怖も、
 この憤りも、
 やるせなさも、
 すべてすべて、学んだものなのだ。




お題元こちら>文章修行家さんに40の短文描写お題
[PR]
by plasebo55 | 2007-05-08 22:03 | お題
 04. 

「暑いな」
 蝉の声、草原に続く細い道路に、蜃気楼。立葵が揺れている。
 何もかも、ザック一つで東京を目指したあの日と同じだ。 

「ただいま」

                               ──旅




 帰ってきてこそ旅だと、どこかで読んだことがあった気がする。

 本当にそうだろうか。


 変わらないと思えるのは、たぶんそれ以上に自分自身が変わったからだ。
 なにも変わらないものなどない。
 変わらずいられる人など、きっといないのだ。

 人の細胞は毎日死ぬし、作られる。
 音は発せられて、消える。
 光は感じられない早さで飛び去るし、
 臭いはいずれ混じり合う。


 人は常に変わり続ける。
 変わったことを感じられる場所を持っていることは、きっと幸せなことだろう。



お題元こちら>文章修行家さんに40の短文描写お題
[PR]
by plasebo55 | 2007-04-30 20:56 | お題
 03. 

「俺ももうハタチだからよ」
 酒もたばこもやめたんだ。
「薬も?」
「おう」
「あたしも?」
「おう。わりぃな」
 ショウは言った、胸を張って。

                     ──卒業



 卒業という言葉を正しく使えば、学校を卒業する、以外にはない。
 比喩的に使うとなれば、対象はとたんに広くなってありとあらゆる名詞につけられるのではないか、などと思う。

 卒業する、と言ったとき、それは対象から完全に離れてしまうことだろうか。
 それは、否、だ。
 それまでの熱狂的な感情はそこにはなく、際限なくエネルギーをつぎ込むことはないだろう。
 ただ離れるのではなく、対象よりも高い視点を手に入れて距離を置くこと。

 卒業とはつまり、対象を自分の中に十分に吸収した結果、起こる物だと思う。



お題元こちら>文章修行家さんに40の短文描写お題
[PR]
by plasebo55 | 2007-04-23 20:00 | お題
 02.

「好きだなどと口が裂けても言えぬ」
 そっぽを向いたレンの頬を、冷たい手がそっと覆う。
「嘘をつけばいい。得意だろう? 心などいらないよ」


                               ──嘘



 嘘をつくということはわずかながらも心に引っかかりを持つものではないだろうか。

 それは代表的なところで罪悪感であったり、
 正当化するための苦しい理屈であったり、
 自分の矜持を捨てたような敗北感であったり、
 見て見ぬふりはしきれない、確かな引っかかりが伴うものだと思う。

 もしそれらを全く感じないとすれば、その言葉はすでに嘘ではなく、
 そのときの自分はその嘘に飲み込まれてしまっているのだ。

 世の中の言葉に嘘か真かしかないのなら、人は嘘を吐かないことなどありえないだろう。
 そして嘘を吐いたときにはきっと、自分の本心を嫌と言うほど思い知るのだ。



お題元こちら>文章修行家さんに40の短文描写お題
[PR]
by plasebo55 | 2007-04-20 22:50 | お題
01.

「あはは、あたり、僕だよ」
 血で濡れた腕をさらすと、息をのむ気配。
 カエは闇の中で転んだらしい、何かを蹴倒す音。
 僕は体を抱いて笑う。


                           ──告白

 告白というのはきっと、

 とても言いたいのに言えないことか、
 言えないのに言わなければいけないことを、口にすることだと思う。

 それはたぶん、果てしない労力を伴って、わずかだけれど安堵を得る行為だ。
 心の安らぎを、平穏を、閉じこめられていたエネルギーを解放する行為だ。

 その行為には必ず相手がいて、それは人だったり物だったり神だったりするのだろうが、
 この行為をすることができるということは、その相手を得ているということだ。

 それはきっと信頼に足るもので、そういう相手がいると確認する行為に他ならない。
 それはきっと幸福なことで、幸福を実感する行為なのではないだろうか。

 


お題元こちら>文章修行家さんに40の短文描写お題
[PR]
by plasebo55 | 2007-04-17 23:50 | お題