今日もどこかで空想中。小説と戯れ言の居場所。


by plasebo55
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 クトゥルフ神話TRPGやってきました、の第2弾。
 シナリオは「朝告げ鳥に餌を与えよ」

 黒猫と白ワインが思ったよりも早く終わってしまい、KPさんの計らいで別シナリオやりましょうということに。準備中のシナリオを急遽繰り上げて仕上げてくださいました! 感謝。

 またまたこの先は後日談です。
 ネタバレがあるような、ないような。
 前回よりは、あります。たぶん。




 キャラクターは東海林めぐみ。前回西だから今度は東だろうと、安直に。
 タケノコ販売業を営む、農林業従事者。
 結果は、生還。前回はSAN値が、今回はHPがピンチでした。






 TRPGのシナリオは先が知れてしまうと楽しくないですから、
 これから遊ぼうと思った方は、お気をつけて! では!



 

後日談、ここから(ネタバレ注意)
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by plasebo55 | 2014-12-31 16:36 | リプレイ!
 クトゥルフ神話TRPG やってきました!
 シナリオは『黒猫と白ワイン』です。

 初めてのクトゥルフ! 文字打つときに間違えちゃうレベルですが、非常に楽しかったです!

 この先は、後日談。
 ネタバレが、あるような、ないような。
 どちらかと、知らない人が読んでもおもしろくないような、というわけで、

 隠してありますが、ページ設定によっては隠れていないかもしれない気もします。




 気の利いた感想とか小話でもできればいいのですが、
 たぶんずっとおもしろかったって繰り返すくらいしか芸がないので、チャンスが在れば是非やってみてくださいー と。

 TRPGですから、いいKPさんと巡り会うとか、いいPLさんと巡り会うとか、運とか自分のテンションとかも影響しますけれどもも。



 プレイキャラクターは西元寺 風有、と若干のきらきらネームでゴー
 自転車乗りの放浪者でした。
 結果は、生還、でした。運が良かった! 仲間のおかげ!



 
 TRPGのシナリオは先が知れてしまうと楽しくないですから、
 これから遊ぼうと思った方は、お気をつけて! では!

後日談、ここから(ネタバレ注意)
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by plasebo55 | 2014-12-30 02:43 | リプレイ!

500

「このままでは、皆、死ぬよ?」

 剣が、重い。
 
 リヒテルはよろけながら立ち上がると、両手で大剣を構えた。師の剣は、驚くほど重く、構えるだけで腕が震える。

「君が守ろうとしている者も、君が助けようとしている者も」

 肩で息をしながら男を睨む。
 銀に輝く短髪。緋色の外套につけられているのは騎士団長の位を示す徽章。後ろにいる団員達に、決して埋もれることのない存在感。なんども石畳に転がされたせいで肘も膝も擦り傷だらけな自分に対して、目の前の男は、涼しい顔をして外套の裾すら汚さない。

「その裏切り者の散りざまを見てなお、私に刃を向ける君を、見上げた根性だなどと褒めたりはしないよ。せめて、扱える剣を手にしたらどうかな。例えば、その男の体に刺さっている私の剣ならば、君でもかろうじて扱えるだろう」

 リヒテルの後ろには、胸に細身の剣を突き立てられた師と、その体に泣いてすがる少女がいる。師のその姿は決闘の末だ、少女を守ろうとして、けれど敗れた。師の意志を酌むのならば、少女を連れて逃げるべきだ、頭ではわかっているが。

「嫌だ」

 師の剣の柄を握り直す。
 騎士団長はゆるりと息を吐き出す。

「使えもしない剣で私から二人を守れると思っているなら、君はとても愚か者だ。君は死を恐れていないかもしれないが、死を恐れないから戦いに勝てる訳ではない」

 死を恐れない。そんなわけはない。
 今だって、大剣の重さ以外の理由で膝が震えている。
 けれど今、師匠の体から剣を抜けば、師は必ず死ぬだろう。

「嫌だ」

 それに。というより。

 憧れだから。

「助けたくはないのかね」

 騎士団長の手袋をはめた手が、掌を上にして脇に控える騎士に出される。その手に乗せられるのは、やはり細身の剣。その鞘を払い、確かめるように剣を振る。

「助け、たい」
「ならばその剣を抜きたまえ」

 今構える大剣は、騎士団長のように素振りすることもできない。悪くすれば、剣の勢いにつまずいて転び、斬りかかる前から男の前に跪く事になる。リヒテルは奥歯を噛みしめる。

「嫌だ」

 奥歯を噛みしめ、剣を構える。意識だけで、横たわる師を見る。そう、今この剣を捨てられるくらいなら、もっと前に捨てられたはずだ。師に幾度も拒絶された、その時に。

「愚か者」

 息を吸って、吐く。死ぬのは嫌だし、二人を助けたいとも思う。そのくせ大剣を扱う技量も体格もないというのに、この剣は捨てられない。なんて強欲なのだろう自分は。リヒテルは柄を握りしめる。
 もう一度、息を吸って、吐く。深呼吸しても心臓の音は早くなるだけだ。やるしかない、先程の師と同じように。やるしかないのだし、やりたいのだ、この大剣で。
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by plasebo55 | 2010-04-12 18:05 | オリジナル小説
 それは日課になりつつあった。

「まったく。あの人は王様やってる自覚あるのかな」

 がらんとした部屋の入り口で、男はため息をついた。

 *  *  *
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by plasebo55 | 2010-02-19 21:33 | オリジナル小説

エール⑥

 剣を、構える。

「おや、まだやる気ですか」

 騎士団長は、よろけながら立ち上がる少年にわずかばかり驚いたように目を開いたが、すぐに呆れたように息を吐いた。

「君が私の相手にならないことは、いくら何でもわかるでしょう。振るえもしない借り物の剣で……ほら、剣先が揺れている」

 借り物の剣、師匠の大剣だ。持ち主の手で振るわれているときには、重さなど感じさせなかったというのに。こうして持ってみると、剣が鋼の固まりで在ることを実感する。苦労して振り上げたら、後ろにたたらを踏むし、振り下ろして相手に避けられれば、地面にぶつかるまで剣を止められない。先程だって、相手に転がされたというよりも、剣の重さに振り回されて転んだようなものだ。

「せめて扱える剣にしたらどうですか。そこの、私の剣ならば、あなたでも扱えるでしょう。体裁を気にしていたら、守れる者も守れませんよ」

 そこの、と騎士団長が視線を向けるのは、少年の後ろ。地面に横たわる師匠の胸を貫く、細身の剣。師匠の傍らには、動かぬ体にすがって泣きじゃくる少女の姿もある。
 少年は、唇を引き結ぶと、大剣の柄を両手で握り直す。 

「守るために剣を手にするのでしょう。そのままでは、守ろうとする人も、助けたいと思っている人も、あなた自身の命も、失うことになりますよ?」

「嫌だ!」

 叫ぶ。
 わかっている。師匠の剣が自分にはとうてい扱いきれる物ではないことも。騎士団長の言うことが、どれほど正論かも。師匠に刺さる剣を抜けば、師匠の命は助からないだろうが、少女の命は守れるかもしれない。けれど。

「俺が憧れたんだ。あの人に」

 だから、他の剣を手に取って戦うことなんて、考えない。

「たいした我が儘ですね。見上げた精神力、などとは言いませんよ」

 騎士団長が、脇に控えていた騎士に手をだす。手に乗せられた他人の剣の、鞘を払い、構えた。

「あなたの決断がどういう意味を持つのか、その身をもって知りなさい」
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by plasebo55 | 2009-12-31 16:23 | オリジナル小説

エール③

 女性は髪をかき上げた。

「それが君の選択」

 テーブルの向かい側、長い髪が女性の指の動きにあわせて揺れるのを、僕は吸い込まれるように見ていて、ふと、気づいた。普段は涼やかで知的な輝きを宿す彼女の瞳は、今は感情を落として暗く沈んでいることに。暗いまなざしが僕をじっと見つめている。

「正直、失望した感がないわけでもない」

 その言葉に、かあっと頭に血が上るのがわかる。冷静でなければならないと、出がけに先生に散々言われていなかったら、この場でわめきだしていただろう。

「僕だって、この答えが正しいなんて思ってる訳じゃないです」

 わめく代わりに握りしめる拳が震える。
 自分が完璧だなんて、そんなこと、思ったことはない。
 自分が正しいなんて、言える自信なんてない。

「僕が正しいなんて、言うつもりもない」

「完璧な人間はいない、か」

 女性はそこで初めて嘆息した。瞬きをした彼女の目元は光を取り戻していたが、僕を見てはいなかった。掌を僕に向けて、伸ばした手を見ている。マニキュアの塗り具合を確認するような、仕草。

「それは、怠慢への言い訳じゃないと言い切れるかい」

 ぎくりとした。

「自分が正しくないから正しくない答えが許される? 完璧でないから完璧でない選択肢が許される? それを安易に選んではいないかい?」

 見ていた爪で、グラスをはじいた。ちん、と高い音。

「錬金術は、最善の選択では駄目だ。魔術助手も、そうだろう? 正しくない物を基底に据えれば、積み上げる物は全て歪んでしまう。それを使えば、結果はわかるだろう?」

 不純物の多い魔力の結晶は、魔術が正しく発動しないばかりか、行使する魔術師に牙を剥くことがある。

「だけど、完全な魔力の結晶なんて」
「そう、存在しない。けれど、絶対にありえないことだろうか。君は考えたことがある?」

 女性はそういって、言葉に詰まった僕を見ると、少し笑った。

「少し休憩しようか。甘い物が考え事には必要だよ」

 いつもの、毒々しい赤紫色のお茶が入ったコップが、僕の前に置かれた。
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by plasebo55 | 2009-11-09 20:37 | お題
「魔術助手に、かい?」

 子供の申し出に、俺は、ふむ、と顎を撫でる。
 目の前の子供は「お願い」と言っておきながら、ずいぶんと厳しい視線を向けてくる。生半な理由では、諦めないだろう、そういう目だ。
 俺は内心困った、と再度顎を撫でて、視線を天井に逃がした。見慣れた天井に、あ、焦げ目が、などとつぶやいたりして、言葉を整理する時間を稼ぐ。

「魔術助手は魔術師になるより大変だと思うけどねえ」

 ちらりと視線をやる。と、子供は視線を険しくしてきた。
 諦めろ、と言われたように感じたのだろう。そういうつもりはないけれど、実際、力を行使する魔術師になるよりも、力を引き出す魔術助手の方が、難関な職業だ。それに、魔術助手は、そもそも「魔力」が見えなければ──それは持って生まれる能力で、努力して身に付くものではない──なることはできない。子供の、天分の問題。

「それに俺は魔術師であって魔術助手じゃないから、教えられるほど詳しくはないし」

 同じ魔力を扱う職業であっても、その性質はまるで違うものだ。
 魔術師であっても、その技術がそのまま魔術助手の技術に生かされることはない。教える、俺の能力の問題。

 それに。

「魔術助手になりたいのは、君の父上のため、かな」

 ぎゅ、と子供の拳が握りしめられた。なんとわかりやすい肯定だろう、俺はため息をついてかぶりを振った。

 子供の父親は、あの大火事の日に命を落とした。火事のせいではない。刀傷を無数に残した遺体は、右手を切り落とされていた。何かを握りしめて離さなかったのだろう、それを、火をつけた犯人が切り落として腕ごと持ち去った。そう、近衛隊は見解を出した。

 伏せていたわけではないが、子供は、どこかでその話を聞いたのだろう。もしかしたら、父親の研究していた内容についても聞いたのかもしれない。
 いずれ、折を見て話すつもりではあったが。そこまで考えて、そうか、と腑に落ちる。子供の厳しい視線は、そもそも俺に向けられているのだ。父親の死を隠した、と。それは多分、善意、悪意にかかわらず、負の感情を呼ぶものなのだろう。

 いずれにせよ、父親が殺された理由がその持ち去られた何かだとすれば、子供がそれを知りたいと思うのは自然なことかもしれない。知るために、父親と同じ職業を目指そうと思うことも。

「そういう理由は、俺はあんまり好きじゃないんだけど」

 ぽり、と頭を掻く。

「でも、まあ、君がどうしてもっていうなら。というかどうせ何を言ったって聞きはしないだろうしね、いいよ、好きにするといい」

 子供は、何を言っても折れる気配を見せないだろう、そう、思えた。いや、そう感じられるのは、俺自身も本当は反対ではないからだ、と考えてみる。俺が、子供の父親の死の真相をしりたいと思っているからだ、と。

 いやそもそももっと単純に。

 先に考えたことを、直感的に否定して、子供にも自分にも向けて、小さく頷く。

「ただし、俺の言うことは守ってもらうからね」

 息子とは、父親の背中を追うものなのだろう、と。偉大であるとか誇りであるとかは無関係に、いずれ越えていく存在として、父親があるのだ。目の前の子供は、きっと父親が生きていても魔術助手を目指したにちがいない、そういうことだろう。

 唇を引き結んだまま、子供が勢いよく頷いたので、俺は言った。

「返事は、はい、ね。それから俺のことは先生と呼びなさいよ」
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by plasebo55 | 2009-09-18 23:52 | オリジナル小説
 何故泣くのかよくわからなかった。

 俺は、燃えさかる炎に包まれたあのときでさえ、ひとかけらの恐怖も感じなかった。なのに腕の中に抱きしめた子供は、大きな声で泣き出し、それで俺は足を止めた。リビングの中央。研究室からの炎が激しい。黒い煙が流れ込んでくる。
 早く建物からでないと、炎より煙に巻き込まれかねない。頭ではわかっていた。けれど、あのときは子供への興味が勝っていた。泣き声は、炎が建物を焼き尽くす音に負けまいとするようだった。

 応援でもするつもりなのか、無責任に。
 それともいよいよ迫る炎への恐怖で。
 早く出ようとせかしているのか。

 まさか助かるとわかったわけではないだろう。俺は、死ぬ気はなかったし、こうして死なずにいるけれど、それは子供にはわからないことのはずだ。

 泣く子供がよく煙りで噎せ込まないものだと、感心して、今更身を低くする。研究室以外は木造の建物、火の回りが早い。建材の水分が膨張して破裂と共に火が噴き出す。観葉植物が爆風で倒れ込んだ。

 テーブルの上のランプが熱で破裂する。そろそろ、出ないと危ない。

 炎でつつまれた四方を見る。玄関は駄目だ。研究室に近い上に、廊下の向こうはどうなっているのかわからない。
 空間転移するか。思いついて、すぐに却下する。研究室に蓄えてあった、魔力結晶が砕けて、濃い密度の魔力が空間に立ちこめている。空間転移は魔力を制御しきれないかもしれない。俺ひとりなら、それでもいいが。腕の中の子供は、魔術を制御する基礎さえしらない。魔術が暴走したら、助けられない。魔術は駄目だ。自分の足で外へ。

 外へ。
 体が動く。

 炎の向こうに見えた窓へ、飛び込む。
 ガラスの破片。
 爆発音。

 背中から石畳の上に落ちる。呼吸が詰まる。

 子供は、まだ泣いていた。
 俺はのろのろと立ち上がって、子供を抱き直す。

「もう、大丈夫だ」

 聞こえた言葉が自分の声で、驚いた。




「それが、あの子を引き取りたいという理由のつもりかね」
「なりませんか」

 向かい合う老人は、ふうむ、と髭をなでつけ思案するそぶりをみせた。いや、困惑しているのかもしれない。少なくとも、自分の立場で望んだものが手に入らないことなどないのだ。結論は、出ているはずだ。

「理由を説明しろと言ったつもりだが、君は経緯を伝えただけではないのかね?」

 そうだろうか。

「まあいい。ただし、定期的に視察させてもらうことにするが、いいかね」
「ええ、もちろん」

 老人は、大きく息を吐いた。

「心配だよ。君が親代わりをするなどと。いろいろと、心配だ、夜も眠れん」
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by plasebo55 | 2008-02-05 12:41 | オリジナル小説

着底

暇つぶしのウナギ御飯。さま。歪真。


 ──俺は、お前を、救わなければならないからな。

 なにを言っているのかわからない。耳がどうかしてしまったように。水に中に居る時みたいにくぐもって聞こえる。

 ──師匠や皆を切り殺した糞ッたれの鬼を!

 視界はすべて残像を引きながら動く。わずかな動きでさえもったりとして、目の前に跪く男が叫んでいるのか、口元が大きく乱れる。
 ああ、動かないでくれ。目が回る。それでいて、体は深く深く沈んでいく感覚。どこまで沈んだのだろう、僕は確か大通りに立っていたはずなのに。

 男は叫び続けている。
 聞き取れない。聞き取れないことが、すまないことのように思える。内容はわからないが、必死な音。

 ──挙句人の身体をぶんどりやがった貴様をぶっ殺してやる!

「何だと……?」

「おっと、動揺しやがったな」

 男は口元に笑みを浮かべた。力関係は、変わっていない。男は相変わらず刀の刃を逃がさぬよう、腕に力を込めている。ただ、鬼が不愉快そうに眉尻を上げただけだ。

「お前のことだから、楽しくやり合った相手は忘れねえだろうよ」
「屍に価値など無い」

「いいや」

 拮抗していた刀がじわりと押し戻される。せいぜい刃一枚分の動きだが、鬼は手のひらに汗がにじむのを意識する。

「お前は忘れられないんだ、あのときの仕合を。だから、お前と渡り合える相手が現れたときだけ、表に出てくる。他はその少年に任せて、楽しめるときにだけ現れるのさ」

 ──あのときの仕合は。

 こぽり、と、水の中に泡が立つ音。沈む僕の脇を通り過ぎ、上へ上へと揺れていく空気の泡。

 ──俺は、違う、約束を。

 約束? 聞き取れたのは、短い単語ばかりだ。けれど、ふと、心が動く。

 あのときだ、落雷の夜に。師を失ったあのときに。この声を聞いたのだ。
 
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by plasebo55 | 2007-09-03 16:29 | リクエスト小説

攻と防と

暇つぶしのウナギ御飯。さまより剣舞。

 死ぬだとか。殺されるだとか。

 鬼は考えたことなどなかった。
 殺すということさえ、重要ではなかった。

 自分に向けられる憎悪の視線が。
 向けられる刃の鋭さが。
 痛みが。血の香りが。

「あっはっは。さあやろう『俺の敵』 あのときと同じように」

 自分を駆動させる。

 男が動く、その始まり、無事な右腕の筋肉が盛り上がるのが見える。さながらうごめく臓腑のように、ぐにゅりと、内に潜む赤色の筋肉が見えた気がして、鬼は目を細めた。

 息を吐く、一瞬だ。男が距離を詰めてくるのは。雨水を跳ね上げ、大剣が迫る。
 突きだ。

 自分の言葉に応えた訳ではないだろうに。鬼は口元をゆがめる、笑み。わずかに身をひねり、かわす。刃の水滴を切る様が、ゆっくりと脇を通り過ぎる。拳一つは入らないだろう、ぎりぎりに避ける。

 大剣は止まらない、突きの軌道を曲げて、鬼を追う。鬼は、かわすために引いた右足で地面を蹴り、跳ぶ、前へ。

 男の剣は攻防一体。それは桁はずれた格闘センス、読みと、大剣の重量をものともしない筋力のなせる技だ。大きく避ければ、防御に十分な時間を与えてしまう。

 故に、最小で避けて、同時に攻撃する。
 わずかに振り上げた刀で、右の手を狙う。

 狙ったはずの右手が消える。考えるまでもない、男が柄から手を離したのだ。

 これが防なら、ここからつながる攻は?

 鬼は反射的に刀から手を離す。同時に左手に激痛。甲に、男の右拳。
 骨は折れたか? けれど、刀はとばされなかった。良い読みだ。ぞくぞくする。

 鬼はかまわず踏み込んだ、左足を軸にして蹴りを放つ。血を流す男の左腕へ、外側から、肘へ。

「がっ」

 男の軋る奥歯の向こうから、わずかに声が漏れる。
 人間には急所も関節もある。石を力任せに割るのとは違うのだ。

 鬼は、笑った。

「まだ、終わりじゃないだろう? 『俺の敵』」
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by plasebo55 | 2007-08-16 23:20 | リクエスト小説