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今日もどこかで空想中。小説と戯れ言の居場所。


by plasebo55
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紅茶と青いコースター

 切ったばかりの前髪が視界を塞いで、
 ふと、瞬きをする。

 瞬きなどしたところで、今更長さが変わるはずはなくて、
 長い前髪はそのままだ。
 そのまま上目遣いで黒い影を見上げる。
 少し煩わしい。

 短いのがいい。とは言わなかったか、そういえば。
 先ほどまでの行為を思い出して、
 口うるさい相手を思い出して、
 そうか、と。ようやく気がついた。
 

 彼は、自分の気の済むように切る。
 私も彼には注文をつけない。

 髪の色も、
 髪型も、
 切るタイミングも、
 すべて彼の気分一つで決まる。

 それでもできあがる髪型はそれなりに満足がいって。
 さすがその道で食べているだけのことはあると思って。

 だから何も言わなかったんだ、今までは。

「今度は言ってみよう」

 短いのがよい、と。

 両手で包むように持っていたティーカップに息を吹きかける。
 紅茶はとっくにぬるくなっていて、それでも、
 もう薄くなった湯気を散らしてから、一口、含む。

「ん、やめとこ」

 ティーカップをコースターの上に戻す。
 グレープフルーツがほのかに香る紅茶。

 コースターの上で、きれいに咲いていた青い花が隠れた。 
by plasebo55 | 2004-10-14 17:14 | オリジナル小説