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今日もどこかで空想中。小説と戯れ言の居場所。


by plasebo55
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距離。(僕小説)

暇つぶしのウナギご飯。さま俺の敵。

 剣を抜いた男は、姿以上に大きく見えた。以前、対峙したときよりも。距離は5メートルほどか。雨脚が強くなって視界が悪いが、剣を構える男の姿ははっきりと見えて、圧倒的な圧力がある。

 あのときは、なんで刃をを交えることになったんだっけ?

 シャオエンは、ふわふわとわき上がってくる自分の記憶を意識する。戦いの最中だというのに、ひどく現実離れした感覚だ。過去に思いをはせるのは、すべてを一人でこなさなければならない一対一の戦闘で、命取りになりかねない。
 刀がうまく握れていないような感触、鋼でできているはずのそれが、酷く軽い。

 体がゆらゆらと、頼りなく揺れている。けれど、気づけば、それは体の呼吸だ。
 体の呼吸よりわずかに早いリズムで、刀が揺れる。切っ先が定まらないわけではない、これは刀の呼吸。

 本当は、「あの方」へ託されたはずの、刀の呼吸。

 自分自身の呼吸も聞こえる、五月蠅いくらいだ。自分の心臓の音、脳に響いてがんがんする。あの方って誰だっけ。そう思う自分の声が、耳鳴りで遠くに聞こえる。

 不用意に、一歩足を踏み出した。あ、あぶない、と自分で思う。自分のことなのに、まるで他人を見ているみたいに。

 男の反応は早かった。シャオエンの足が地面につくよりも速く、一歩を踏み出している。上段から大剣が振り下ろされる。雨を切り裂いて。

 シャオエンはわずか左に身をよじるように、剣の軌道から体を逃がす。大きく逃げれば攻撃にはつながらない。あれだけ大きな剣を振り下ろせば、二撃目までには時間がかかる。そこを、突く。

 しかし、不用意とはいえこちらが先に踏み出したのに、後れをとるとは、どんなスピードだ? 驚愕を抱えながら、振り下ろされる大剣を視線で追う、自分の右脇を、大剣が通り過ぎる。

 否。

 ばかな。その驚きは先程を軽々と超えた。
 大剣は、振り下ろされなかった。

 止まった?

 大剣は、シャオエンめがけて振り下ろされ、しかし地面にめり込まず腰ほどの高さでひたりと静止し、引かれた。

 どれだけの膂力。シャオエンは驚愕しつつも、さらに踏み込んだ、引かれる剣と同じ早さで、男の懐に飛び込むと、中段で構えた刀を突き出した。
by plasebo55 | 2007-08-05 21:28 | リクエスト小説